ダウン症のお子さんの多くには知的障害が見られます。この記事では、ダウン症について詳しく解説し、知的障害を伴うダウン症児への支援方法と、ふさわしい関わり方をお伝えします。知的障害を伴わない場合にもあてはまる内容なので、ぜひ参考にしてみてください。
ダウン症とは
ダウン症、正式名称「ダウン症候群」は、染色体の異常による先天性の遺伝子疾患です。小児慢性特定疾病情報センターによると、ダウン症の発症率は600〜800人に1人となっています。
通常、人間の細胞には46本の染色体が存在しています。ダウン症の場合、21番目の染色体が1本多く、合計47本の染色体を持っているのです。このことから、ダウン症は「21トリソミー」とも呼ばれています。
発症率は少ないですが、ダウン症には「21トリソミー」の他に「モザイク型」と「転座型」という種類もあります。「モザイク型」とは、46本の染色体を持つ正常細胞と、47本の染色体を持つトリソミー細胞が混在しているものです。また、「転座型」とは、21番目の染色体の一部が他の染色体に結合したものを指します。
染色体異常が起こるメカニズムは、まだ完全に解明されていません。偶発的に発生し、誰にでも起こりうるものなのです。
ダウン症の子どもの症状と特徴
ダウン症のお子さんには、大きく分けて4つ特徴が見られます。ポイントは発達の遅れです。発達の遅れの程度には個人差があり、「知的障害」もダウン症のお子さんの多くが持っている特徴の1つです。
知的発達の遅れ
ダウン症に見られる特徴は、発達の全般的な遅れです。知的機能の発達が遅れる「知的障害」があるお子さんも多くいます。知的障害とは、知能発達の遅れにより、生活に困難が生じている状態のことです。ダウン症のお子さんにおける知的障害の程度には個人差があります。
運動機能の発達の遅れ
特徴の2つ目は、運動機能の発達の遅れです。ダウン症のお子さんは筋力が弱く、関節が緩いという特徴があります。そのため、首のすわりが遅かったり、歩き始めるまでに時間がかかったりする傾向があります。
手を伸ばしておもちゃを引き寄せて遊んだり、ハイハイで後追いしたりすることも少ないので、周囲の人や物への関心が低いように感じるかもしれません。
言語機能の発達の遅れ
ダウン症のお子さんには、言語機能の発達にも遅れが見られます。言葉の発達が遅れる理由には、言葉を聞いて覚えるといったような言語理解が遅れていることの他に、口や喉の筋力が弱いことも関係しています。
後述しますが、聴覚に障害のあるお子さんもいるため、言葉でのコミュニケーションが難しい場合もあるでしょう。
健康問題を伴う
ダウン症のお子さんの多くは、何らかの合併症を抱えていることが多いです。心疾患や消化器系疾患、視覚や聴覚の障害など、お子さんによって合併症の種類や程度もさまざまです。
医学の進歩により、妊娠中から出産直後までに異常が発見できるようになりました。早期に治療を開始できれば、症状を軽くすることも可能です。
ただし、知的障害を伴うダウン症児の場合、身体の異常を自ら伝えられないことがあるため、疾患を見逃さないよう注意が必要です。
ダウン症によく見られる合併症については、次の見出しでご紹介します。
ダウン症の子どもに見られる合併症
ここでは、ダウン症の合併症について解説します。合併症の種類や程度には個人差があり、全て当てはまるということではありません。
心疾患
ダウン症の新生児の約40〜50%が、先天性の心疾患を持っていると言われています。特に、心室中隔欠損や心房中隔欠損が多いです。心臓の右側と左側を仕切る壁に穴が空いている状態で、手術が必要な場合もあるでしょう。
消化器系疾患
ダウン症のお子さんには消化器系疾患も見られます。十二指腸が閉じている「十二指腸閉鎖症」や、肛門が閉じている「鎖肛」が多いでしょう。消化や排泄ができないため、早期に手術する必要があります。
代謝・内分泌系疾患
ダウン症では、先天的な甲状腺機能の低下が見られます。新生児のときに発見されることもあれば、成長につれて明らかになることもあるでしょう。ホルモン分泌が正常にいかないため、肥満、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症などを発症し、治療が必要になる場合もあります。
耳鼻科系疾患
ダウン症のお子さんは、中耳炎や滲出性中耳炎になりやすく、多くのお子さんに難聴が見られます。難聴は言語発達や精神発達にも影響を与えます。1〜2歳になっても声かけに反応しない場合は、難聴の検査を受けましょう。
眼科系疾患
眼科系の疾患として、斜視、白内障、遠視、近視、乱視などが見られることもあります。視力の低下は、脳への情報刺激に影響するため、早期に対処することが大切です。
血液系疾患
ダウン症では、急性白血病の発症率が高い傾向にあります。鉄欠乏性貧血も多く見られ、治療が必要です。
泌尿器系疾患
男の子のダウン症の場合、停留精巣が多く見られます。停留精巣とは、陰嚢の中に精巣が入っていない状態で、自然に降りてこない場合には、1歳から2歳までに手術が必要になります。
知的障害があるダウン症のお子さんが受けられる支援
ここでは、知的障害を伴うダウン症児が受けることのできる支援についてご紹介します。もちろん、知的障害を持たない場合にも当てはまります。
特別支援教育
ダウン症のお子さんは、特別支援学校や通常の学校の特別支援級で、その子に必要な特別支援教育が受けられます。合理的配慮を受けながら、普通学級に通うという選択肢もあります。
生活において、支援がどの程度必要なのかや、お子さんの個性や特性に合わせて、支援を受けられる場所を選ぶことが大切です。
療育(発達支援)
療育(発達支援)も、ダウン症のお子さんが受けられる支援の1つです。療育では、障害があるお子さんの困りごとを解決し、お子さんの自立や社会参加を目標としています。
未就園児が通える児童発達支援施設では、日常生活や集団生活で必要な知識やスキルを取得できます。ダウン症のお子さんは、運動機能の治療や理学療法などの機能訓練ができる施設がおすすめです。
知的障害があるダウン症のお子さんへの関わり方
わかりやすく伝えてじっくり聞く
ダウン症のお子さんは、言葉でのコミュニケーションが苦手です。聴力が弱かったり、言語理解が遅れていたりするため、相手の話を聞いて理解するのが難しいのです。
そのため、身振りや絵を使った視覚的なコミュニケーションを心がけましょう。ことばの補助として絵カードなどを取り入れ、コミュニケーションが取りやすくなる工夫をするのもおすすめです。また、ゆっくり、はっきり話すことも大切です。
ダウン症のお子さんは、呼吸器の合併症や口の筋力が弱いため、発音が不明瞭になることもあります。焦らずに、自分のペースで言葉にしてくれるのを待ちましょう。
スモールステップで成功体験を積む
ダウン症のお子さんは、ゆっくりと成長していきます。食事やトイレ、衣服の着脱など、支援が必要なことも多いでしょう。できないことに目をとめると、自信を失い自己肯定感の低下に繋がります。
そのため、1つの行動をいくつかのステップに分け、それぞれのステップを成功できるように導いていく工夫ができるでしょう。たとえば、トイレトレーニングの場合、「下着をおろす」「便座に座る」というように、手順に分け、1つ1つ達成できるようにしていきます。
できるようになるまで時間がかかりますが、じっくり取り組み、できるようになってきたら徐々にサポートをゆるめていきます。お子さんが何かできるようになったら、一緒に喜ぶことも大切です。
「できた」という感覚がお子さんにとって嬉しいものであるように対応していくことで、物事へのモチベーションが育まれます。結果ではなく過程を認めて褒めてあげると、その子の自信に繋がるでしょう。
得意なことを伸ばして自信をつける
お子さんは皆、好きなことや得意なことを持ってるものです。自分の興味がある分野でできることを増やしていくと、お子さんも自信を持ちやすく、自分のことが好きになるでしょう。
ダウン症のお子さんが「やりたい」と伝えてくれたときには、積極的に応援してあげるようにしましょう。きっと家族の絆も強くなるはずです。
まとめ
ダウン症のお子さんは、運動、知能、言葉、社会性の面で発達がゆっくりであるという特徴を持っています。焦らずにその子のペースに合わせて支援することで、お子さんの成長を促すことができるでしょう。
また、知的障害を伴うダウン症の場合、知的障害へのサポートも必要になってきます。
ダウン症のお子さんを育てる親御さんは、ご自身の精神的なサポートも必要としているものです。療育では、お子さんにとってだけでなく、保護者にとっても必要な支援が受けられますよ。積極的に利用して、がんばりすぎずに子育てできたら良いですね!
株式会社ダンデライオンでは、子どもたちの可能性を広げる架け橋となることを目指した療育施設「BRIDGE(ブリッジ)」を千葉県内で9施設展開しています。
「子どもたちへの可能性を導く架け橋となる」を理念に掲げ、子どもたち一人ひとりの可能性を引き出すために、家族や社会とのつながりを大切にしています。
言語聴覚士、臨床心理士、公認心理師、作業療法士、理学療法士、保育士など多様な資格を持つ指導員が全国の特別支援学校や療育施設で実践されている療育技法「太田ステージ」に基づいた指導を行っています。
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