まわりの子が当たり前にできることができない。落ち着きがない。喚き散らして言うことを聞かない。「どうして、うちの子だけ…」そんな不安や悩みを抱えながら、子育てをしていませんか。それは、もしかしたら発達障害、もしくは発達障害の症状が見られる『グレーゾーン』かもしれません。
発達障害は見た目では分かりにくく、障害に起因した行動がその子の性格や努力不足と取られてしまう傾向があります。また、まわりから親のしつけの問題と思われ、多大な心労を抱えている保護者の方も多いのが現状です。
大切なのは、子どもの特性を理解すること。そうすることで適切な対処をとり成長を促していくことも、様々な支援を受けることもできるようになります。
この記事では発達障害への理解を深め、グレーゾーンとは何なのかを知っていただき、今日からできる子どもたちとの向き合い方をお教えしていきます。
●発達障害の症状とは?
発達障害とは、脳機能の発達が定型発達の子どもたちと異なっていたり、偏りがあったりするために起こると言われています。症状別に、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)の主に3つに分類されます。
・自閉スペクトラム症(ASD)
自閉症やアスペルガー症候群と呼ばれることもある自閉スペクトラム症(ASD)。言葉の遅れ・会話が成り立たない・対人関係の障害(視線を合わせられない、相手の言っていることへの理解が困難、顔の表情がない・乏しいなど)・興味関心の偏りなどが主な症状です。また感覚過敏や鈍麻(刺激に対する反応が鈍いこと)を伴う場合もあります。約54人に1人にASDの症状が表れるという調査結果もありますが、原因はまだ明らかになっていません。言語・コミュニケーション面で障害が出るため、集団生活の中で問題が生じることがあります。
・注意欠如・多動症(ADHD)
年齢にそぐわない不注意、多動性、衝動性といった症状が見られるのが注意欠如・多動症(ADHD)です。一つの症状が強く出ることや複数の症状が合わさって出る場合もあります。
それぞれのより詳しい症状は以下になります。
不注意…
気が散りやすく作業に集中できない/忘れ物が多くモノを紛失しやすい/約束を忘れる/ケアレスミスが多い など。
また、自分の興味が強いことに取り組んでいると、人から話しかけられても気が付かず、無視して誤解を与えてしまうこともあります。
多動性…
落ち着きがない/無意識のうちに体が動く/おしゃべりがやめられない など。
授業中に出歩いてしまったり、私語がやめられなかったりするため、集団生活を送る中で問題行動が目立ってしまうことがあります。
衝動性…
突然モノを投げる/人を叩く/道路に飛び出す/順番が待てない など。
思いついた行動をすぐにとってしまうため、話を最後まで聞けない、友達のモノを許可なしに勝手に使ってしまうなど、集団生活の中で人と衝突してしまうことがあります。
・学習障害(LD)
読み書きをはじめ、計算や推論する能力に困難が生じます。
さらに下記のような特性が現れる場合もあります。
ディスレクシア(読字障害)…文字を正確に読めない。読めても意味を理解できない。
ディスグラフィア(書字障害)…文字を書くのが遅い。文字が枠からはみ出る。
ディスカリキュア(算数障害)…数の概念が理解できない。
●発達障害のグレーゾーンの子どもの特徴
発達障害のグレーゾーンとは、発達障害の症状は見られるものの診断基準には満たない状態のことです。前述した症状の一部が見られます。ここでは、年齢別に表れる傾向をご紹介します。
・保育園・幼稚園児に見られる傾向
・友達と上手く遊ぶことができない
・集中力がなく、気になることがあると食事も途中で止めて動き回る
・順番や道順、モノの位置などへのこだわりが強い
・常に動き回る
など
・小学生に見られる傾向
・言い争いやトラブルが多い
・授業中に歩き回ってしまうなど、学校のルールが守れない
・忘れ物が多い
・一人で話し続けてしまう
・場面に合わない質問をしてしまう
・読み書きに時間がかかり、間違いも多い
・計算が苦手
など
・中学生・高校生に見られる傾向
・思ったことをすぐに口に出す
・場の空気を読むのが苦手
・文脈の理解が困難
・忘れ物や失くし物が多い
・好きなことにしか集中ができない
・提出物や予定を忘れる
・読み書きや計算など特定の分野が苦手
など
●発達障害のグレーゾーンに診断基準はある?
発達障害は精神科や心療内科の診察・検査によって診断されます。もちろん診断基準はありますが、障害の特性が出ていても確定診断がおりないこともあります。まずはその理由を見ていきましょう。
・発達障害のグレーゾーンは正確な診断が難しい
確定診断がおりない理由は大きく2つ考えられます。
1つ目は、体調によって症状の出方にブレがあるケース
グレーゾーンの子どもは診断基準を満たすかどうかの微妙なラインにいるので、その日の体調や気分によっては目立った症状が見られず、医師が発達障害の診断を下せない傾向があります。
2つ目は、医師の主観による診断であるケース
発達障害の診断基準を満たしているかどうかは、その医師の主観によるものです。そのため医師によって診断にブレが生じる場合があります。
・発達障害の症状が軽い=グレーゾーンではない
複数ある診断基準のうち、一つでも満たせないと発達障害の確定診断がおりないこともあります。そのためグレーゾーンの子どもの中には、発達障害の確定診断を受けた子どもよりも、特定の項目で強い特性が出ている場合もあります。
●発達障害の正確な診断を受けるためには
ご説明したような困難を避け、正確な発達障害の診断を受けるためにできることを3つご紹介します。
その1:客観的な指標を取り入れた検査を受ける
どうしても医師の主観による診断ではブレが生じます。そこでQEEG検査と知能検査(WAIS‐Ⅳ、WISC‐Ⅳ)といった客観的な指標を用いた検査を受けることで診断の精度を高めることができます。
その2:症状や困りごとについて正確な情報を医師に提供する
日常の気になった症状をメモしておき、診察を受ける際はこれまでの症状や普段の様子がわかる日記や母子手帳などを持参するといいでしょう。正確な診断には、正確な情報が必要不可欠です。
その3:セカンドオピニオンを求める
医師の主観による診断が中心になるので、場合によっては複数の医師の診断を受けることも大切です。
●子どもが発達障害のグレーゾーンかも?と思った時の対応
発達障害の子どもは注意されている内容を理解できなかったり、あるいは親の子どもに対する理解不足によってコミュニケーションに摩擦が生じることがあります。ここでは、その摩擦を回避するためにもし我が子が「グレーゾーンかも?」と思った際にまず取るべき対応をお教えします。
・子どもの行動を観察する
問題行動を起こしてしまった要因・経緯を知ることは、子どもの特性への理解を深めることに繋がります。また問題行動の原因を見つけることができれば、改善を目指していくこともできます。
お仕事をしている保護者さまもいらっしゃると思いますが、まずは最低2週間子どもを観察し、次の点を押さえてメモを取ってみてください。
① 問題行動をした時間
② どんな問題行動だったか
③ 直前の出来事
④ その時の対処や対応
⑤ 気付いたこと
など
何がトリガーになって問題行動を起こしたかを知る上で最も重要なのが③直前の出来事です。特に意識して観察をしてみてください。
・ 子どもの行動の特性を理解する
発達障害やグレーゾーンの子どもは自分の考えていること、感じていること、困っていることなどを言語化するのが苦手です。ですが、子どもたちが感じているネガティブな気持ちに気が付けないと、別の二次障害を引き起こすことにも繋がります。
二次障害とは、発達障害による日々の困難によって心理的に傷つき精神的な不調を抱えるなど発達障害が原因で発症する二次的な障害のことを言います。
そうした二次障害を回避するためにも、子どもたちの症状や感情を理解した上で日々接することが大切です。
・苦手なことに対してきつく叱ったりしつけをしない
発達障害やグレーゾーンの子どもは、自分の感情を泣いたり怒ったりすることで表現する傾向があります。癇癪を起こす、モノにあたるといったことも、感情を知ってもらおうとしての行動です。ですから、そうした問題行動に対してきつく叱るのではなく、「感情を表現しようとしているんだな」と理解しようとすることが大切です。
必要なのは、子どもが感じているであろうネガティブな感情や生きづらさに寄り添うことです。
●発達障害のグレーゾーンで悩んだ時の相談先
悩んだ時は、抱え込まずに積極的に相談することも大切です。ここではどういった相談先があるのかをお教えしていきます。
・幼稚園・保育園や学校の先生
信頼できる幼稚園や保育園の先生がいる場合には相談してみてください。特に第一子の場合は、子どもの発達具合を客観的に見るのが難しいので、近くで子どもを見てくれている保育のプロの意見は大変参考になると思います。
・自治体の子育て相談窓口
お住まいの自治体のHPで「子育て支援」「子ども家庭支援」といったキーワードで検索をし、相談窓口を探せます。また自治体によっては、グレーゾーンの子どもたちの子育てサークルなどが活動を行っているところもあるので、参加してみることもおすすめです。同じような悩みを抱えている人たちとの繋がりができることは、心強く感じるはずです。
・近くの特定相談支援事業者
障害児通所受給者証の発行前の段階から相談できる(無料)のが特定相談支援事業者です。障害を持つ子どもたちが日常生活を送るために必要なサポートをする専門機関で、発達障害の確定診断前の気づきの段階から、様々な相談に乗ってもらうことができます。
また希望・要望を大切にしながら、必要とする支援について一緒に話し合い、福祉サービスの利用計画を作成してもら得こともできます。さらに障害福祉サービスを利用するにあたっての必要な手続きや申請についてのサポートも行ってくれます。
・療育施設の支援を受ける
発達障害の確定診断がされていなくても、障害児通所支援事業を使用し、子どもの特性に合わせた支援計画のもと、療育を受けることが可能です。発達障害やグレーゾーンの子供を持つ保護者に向けた相談会を行っている施設も多いので、まずはお話を聞きに行ってみるのもいいと思います。実際に通う際には、保健センターなどが発行する障害児通所受給者証が必要です。施設によって療育方針が違い、支援の内容も異なるので、特性に合った希望するプログラムのあるところを探してみてください。
●まとめ
今回は、発達障害グレーゾーンの子どもたちの特徴と対応についてご紹介しました。
グレーゾーンの子どもたちは、定型発達の子どもたちと同じようにできることもたくさんあるため、特性に気が付きにくい傾向があります。
例えば自閉スペクトラム症(ASD)の傾向がある方であれば、人とのコミュニケーションが苦手な反面、集中力が高く正確性を求められる事は得意です。注意欠陥・多動症(ADHD)であれば、自分の好きなことには集中して取り組めるので、興味関心のある分野に強みがあると言えます。学習障害(LD)であれば、読み・書き・計算のどの分野が苦手か、得意かを把握しましょう。
ご説明した通り、まわりと比べることなく我が子をしっかりと観察し、特性を理解しようとしてあげてください。特性を理解することは今を生きやすくすることはもちろん、将来、自分に合った仕事を見つける上でも役立ちます。また、困ったり悩んだりしたときは一人で抱え込まず、さまざまな相談先を利用し、支援を受けることを心がけてください。
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