この記事では『ABA』についてお話しします。はじめて聞いた方も多いと思いますが、ABAの意味は日本語で「応用行動分析学」のこと。BRIDGEでは2年目以降の職員が研修を受け、ABAの知識を療育に活かしています。
まだまだ日本では一般的とは言えませんが、国際的にはスタンダード。アメリカではほとんどの州でASD自閉症スペクトラム障害や関連する発達・知的障害を持つお子さんへの療育として、保険適応されるほど評価が高いんです。
今回は当社も研修をお願いしている認定行動分析士の田中 桜子先生にお話を伺いました。
●ABAとはどういったものですか?
応用行動分析学という名前の通り、人間の行動をデータ化・分析し、新しい行動の獲得や問題行動を解決していくための理論と実践のことです。すこし難しく感じられたかもしれませんが、実はカンタンなものであればすぐに家庭でもできます。例えば、トイレトレーニング。一週間、何時にうんち・おしっこをしたかを記録していくと、どの時間帯にトイレに行かせたらいいのかがデータをもとにわかりますよね。そうすれば保護者さまの負担も減りますし、効果的にトイレトレーニングを進めることもできます。これもABAの考え方を用いた取り組みのひとつです。
日本では、教室で騒いでしまう、指示に従えないなど、学校やその先の社会で生活をしていく上での不適切行動の改善を目的として、主に発達障害のお子さんの療育に使われています。
●具体的には、どういったことをするのですか?
カンタンに言うと、問題行動がなぜ起きるのかを客観的に分析。それをもとに改善策を考えていきます。
具体的な事例をもとにお話をします。夕食の時に騒いでしまうお子さんのご相談がありました。生活習慣などを分析していくと、家族全員が集まるのが夕食の時だけだったため、注目を集めるために騒ぐのではないかと考えられました。そこで夕食前に家族みんなでゲームをするなど、他の時にも一緒にいられる時間を作る。また夕食の時、騒いでも計画的無視をする。そうすることで騒ぐ原因を取り除くとともに、騒いでも注目を集められないと理解させることで改善へと向かっていきました。
このようにABAで注目するのは、行動前の出来事と行動後の結果です。さらにABAには「強化子」と「消去」という考え方があります。強化子とは行動の後に起こる良いこと。良い行動を定着させていくための方法です。ハグ、くすぐり、スキンシップ、おやつや好きなオモチャなどが強化子になります。ですが、褒めれば育つ、ということではないので、そこは注意してもらいたいと思います。逆に消去は困った行動を減らしていくためのもの。行動の後に良いことが起こらなければ、その行動は減っていきます。こうした「強化子」と「消去」を使いながら、ABAでは問題行動の改善を図っていきます。
他にも「プロンプト」という方法もあります。子どもから期待する反応を引き出すための手助け、と理解してください。例えば、「ありがとう」を言わせようとした時に「あり?」で留めて子どもたちに気づかせるようなこともプロンプトです。少しずつ手助けを減らしていき、自分でできるように促していきます。
●ご家庭でできることなどはありますか?
事業所での取り組みだけでは問題行動の改善は難しい場合が多いです。そのため、事業所でやっていることを、家庭でも実施してもらえるようにすることが大切です。これをペアレントトレーニングと言います。
家は子どもたちが一番長くいる場所ですし、事業所ではできても他の場所ではできないと意味がないですからね。1つの成功が次のチャレンジにつながるので、カンタンなことでいいのでご家庭でも取り組んでもらうことが必要です。
●田中先生がABAで実現したいことはありますか。
ABAを通じて、多くの子どもたちに「生まれてきてよかった」と感じてほしい。そして、自分なりの居場所を作ってもらえるようにしたいと思っています!そのためにも正しいABAの考え方をもっともっと広めていきたいですね。
田中先生、ありがとうございました。BRIDGEでは各事業所にABAを学んだ職員がいます。子どもたちの行動の改善や関わり方を考える時に、ABAのエッセンスを使用しています。この記事を読んでより詳しく知りたいと思われた方は、ぜひ一度お問い合せください。