この記事では『学習支援』についてお話しします。今回はBRIDGEのアドバイザーとして関わっていただいている、公認心理師の澳塩 渚先生にお話を伺いました。
●学習支援とはどういったものですか?
「学習支援」というと、国語や算数といった勉強のサポートをイメージするかと思います。ですが、心理学においては、こどもたちが育っていく上で新しく物事を身につけ、新しい知識を獲得していくことの全てを学習と言います。学習支援は、生きていく上で必要となる力を、こどもたちが吸収しやすくしていくことです。
発達段階に合わせ、未就学児向けや小学生向けなどで内容の変化もありますが、大まかに分けると「コミュニケーション」と「文字・数につながる概念」の学習に分けられます。学習支援は一般的には小学生以上が対象ですが、BRIDGEでは早期療育として発達障害のある未就学児の支援も行っています。
●吸収しやすくする、というお話を詳しく教えてください
脳の神経の作りは1000人いれば1000通りあるとも言われるほど、一人ひとり違います。
例えば、何かを学ぼうと思ったときに、文字の方が理解しやすい人も、絵や図の方が頭に入りやすい人もいますよね。それは最近ではニューロダイバーシティ(日本語では脳の多様性などと訳されます)とも言われる、脳神経の作りの違いによるものなんです。ですから、一般的な方法では必要な情報を吸収するのが難しい人もいます。
これは能力の高い低いではなく、その人に合っているかどうかです。そこで一人ひとりの吸収しやすい方法に合わせてグッズなども上手く使いながら、学習支援を行っていきます。
●どのように吸収しやすい方法を見つけるのですか?
基本的には、その子の好きなこと・嫌にならないこと、から判断していきます。例えば、ブロックやプラモデルなどカタチを作っていくものが好きな子であれば、言葉よりも絵でイメージするのが得意ではないかと仮説が立てられます。もちろん一概には言えないので注意は必要です。
先ほども少し触れましたが、五感を使って取り入れた情報を脳が処理し、理解に繋げる過程は一人ひとり異なります。好きなことというのは、自分が物事を理解しやすい処理の方法に当てはまっていることが多いので、学習を吸収しやすい方法を見つける大きな手がかりになるんです。ですから、保護者の皆さんも、お子さんが普段の生活の中でどういったことが好きなのかを見ていくと、言葉ではなく絵で伝えてみるなど、伝え方の参考にできるかと思います。
その子がどんなことが得意で、何が不得意なのか。力の強い部分、ゆっくり成長している部分を見極めていくことが大切です。
●学習支援で目指すことは何ですか?
発達障害のある子どもたちや、読み書きなどの能力に困難が生じる学習障害(LD)の子たちは、頑張っても成果に繋がらなかったり、周りの子ができていることができなかったりします。叱られたり否定をされたりすることも少なくありません。そのため自信がなくなっていき、学習が嫌になり、全ての物事に対して無力感を抱いてしまうんです。
子どもたちは、人から「ダメだ」と言われると、自分はダメであると学習してしまいます。そうすると、さまざまな学習がうまく進まなくなり、心身ともに良くない影響が出てきてしまうんです。ですから、学ぶことが嫌にならず、自分の力を信じられるようになることを目指します。
自分を認めてあげる力である自己肯定感。やればできる子だと思える自己効力感を獲得していってもらえるように、支援をしていきます。
前もできたことがあるから、今度もきっとできるだろう。そんな自分を信じる力を養ってもらいたいですね。
●最後に保護者さまへメッセージをお願いします
療育センターで受けた発達検査や知能検査の結果を気にされる保護者さまも多いと思います。特に小学校に上がる前の年長さんの段階で、思ったよりも数値が低かったりすると、勉強についていけないのではないか、と不安になりますよね。ですが、それらはできるかできないかを測るものではなく、その子の得意なことや苦手なことを理解し、どのようにサポートすると苦手なことがカバーできるか。そして得意なことを伸ばしていけるかを知るためのものです。子どもが幸せに生きていくための、サポートの指針を決める地図の一部でしかありません。それでも不安があれば、その検査を行った先生に相談してみてください。またそれぞれの市町村にある発達障がい者支援センターに行ってみることもお薦めです。
澳塩先生ありがとうございました!脳の多様性により吸収しやすいやり方がある、というのは様々なご家庭で活かしていけそうですね。当ブログでは、今後も療育のお話をドンドン発信していきます!皆さまにとって少しでも有益になる情報をお届けできればと思いますので、次回もぜひご覧ください!