周りの子と比べ、我が子の不器用さや注意力のなさが目につくと、親として心配になることもありますよね。そうした中でも例えば、鉛筆の持ち方がうまくいかずに字が乱れたり、紙をキレイに折れなかったりする場合、「感覚統合」がスムーズに進んでいないことが原因かもしれません。この記事では、感覚統合の仕組みとその対処法についてお話しします。子どもたちが自分らしく成長していけるように、ぜひご参考にしてください。
感覚統合とは
私たちは日常生活で光や音など、さまざまな刺激に触れながら過ごしています。これらの刺激が身体に与える影響を感じる機能が「感覚」です。五感(触覚・視覚・聴覚・味覚・嗅覚)に加えて、固有受容覚(手足の状態や筋肉の伸び縮み、関節の動きを感じる感覚)、前庭覚(身体の動きや傾き、スピードを感じる感覚)といった、合わせて7つの感覚が存在します。
こうした感覚情報が絶えず脳に入ってくる中、感覚統合はその多様な情報を整理し、分類することで、状況に適した感覚の調整をしています。この働きによって、自分の身体を理解し、道具を効果的に扱ったり、周囲の状況を的確に把握したりすることができます。感覚統合は、生活していく上で欠かせないものなのです。
感覚統合と発達障害の関係
感覚統合がスムーズにいかないと、さまざまな問題が生じることがあります。感覚統合は、「交通整理」や「信号機」に例えられることがあります。これらがない道路では、交差点で車がスピードを落とさずに走行し、渋滞や交通事故が多発。大きな混乱が生じることになります。
感覚統合がうまくできない脳も同じで、様々な刺激に対応できなかったり、逆に十分な刺激を受け取れなかったりすることで、適切な対応が難しくなってしまいます。
感覚統合が不十分な状態とは、例えば先生の話を聞く場面で、扇風機の音や窓の外の車や人の動き、服のタグの感触、給食の匂いなどが気になり、集中力を維持することが難しくなります。周囲からは落ち着きがない、注意散漫といったかたちで受け取られることもありますが、そこには感覚統合の問題が潜んでいることがあるのです。また、発達障害の中には、感覚統合がうまくできていないことが関与している場合も少なくありません。
感覚統合がうまくいかない子に見られる5つの特徴
感覚統合が円滑でないと、感情、人間関係、言語など、日常生活のいろいろな場面で問題が生じることがあります。ここでは、感覚統合がうまくいかない子の特徴を5つご紹介します。
じっとしていられない
集中力の持続に課題がある場合があります。静かに座っていることが難しい、不安定な動きが見られるといった行動は、聴覚などが敏感で、環境の刺激に敏感に反応している可能性があります。
友達を強く押す・叩く
感情の制御が難しく、衝動的な行動が見られる傾向があります。同時に、筋肉の動きを適切にコントロールする感覚が発達していないため、力の調整が難しいという特徴もあります。
お気に入りの肌触りに固執する
特定の素材の触り心地にこだわり、他の服を着たがらない子もいます。こうした場合、その子の触覚が十分に発達していないか、逆に過敏なのかもしれません。「触覚」の発達を促進するためには、子どもが心地よいと感じる柔らかいブラシやスポンジを使って、手や足の皮膚を優しくなでると良いでしょう。また、砂場遊びや水遊び、小麦粉粘土やスライムなど触感を刺激する遊びを導入することもおすすめです。
爪や鉛筆などをかむ
爪・鉛筆・タオル・洋服などを噛んでしまうといった行動も、感覚統合の問題が考えられます。口の中の感覚が不足している可能性があり、刺激を求めているためにそういった行動を取っているのかもしれません。このような場合、シリコン製の「チューイー・チューブ」などのアイテムを用意して、まずは好きなだけ噛むことができるようにし、口内に必要な刺激を提供してあげると良いでしょう。
言語コミュニケーションが苦手
言葉が上手く出てこない、話しかけても注意を向けてくれない、自分の考えを適切に伝えることが難しい、助詞の使い方に誤りが見られるなど、言葉を使ったコミュニケーションが苦手なのも、感覚統合からくる問題の場合があります。
適切に対応しないと二次障害を招くおそれも
上記で説明した通り、感覚統合に問題がある場合、仕事や学校生活などで失敗をしてしまう、問題だと思われる行動を取ってしまうことが、どうしても多くなります。また感覚統合の問題を周囲に理解してもらえず「怠けている」「不器用だ」という見方をされてしまうことも少なくありません。そうした周囲からの評価によって、自信を失い、最悪の場合二次障害へと繋がっていってしまうこともあります。
感覚統合を進めるには?
ここでは、感覚統合に問題があるかもしれないと感じた場合の支援について、代表的なものをご紹介していきます。
感覚統合療法を行う
感覚統合のサポート方法として、感覚統合療法を導入することが有効です。限局性学習症(SLD)、発達性協調運動症(DCD)、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)などの子どもたちに対して効果的な療育手段としても広く活用されています。感覚統合療法では、作業療法士(OT)が子どもに寄り添いながら、楽しいと感じる遊びや運動を通して、感覚機能の未熟な部分や苦手な部分を発展させることを目指していきます。
子どもが自らやりたいと思えることを行う
感覚統合の機能を向上させるためには、必要な感覚を適切に受け取るためのトレーニングが有効です。細かく計画されたプログラムを与えるのではなく、本人が「やってみたい」と思う活動を通じて、成功体験や感覚刺激を積み重ねていくことを大切にしていきましょう。また、長期にわたる発達の段階を「楽しい」と感じながら、自発的にさまざまなトレーニングに取り組めるように環境を整えることが重要です。
感覚統合に不安がある方は早めに専門家に相談を
先ほどもお話ししましたが、感覚統合のつまずきには、感覚統合療法を取り入れることも1つの方法です。専門的な知識や経験が必要になりますので、感覚統合療法にご興味のある方は、自治体の療育センターやリハビリセンター、小児科医などの医療機関に相談してみると良いでしょう。専門家に相談することで、安心を得られる効果もあります。一人で抱え込まないことが大切です。
まとめ
最後までお読みいただき、ありがとうございます。感覚統合について理解は深まったでしょうか。感覚統合は、子どもたちが生きていくうえで様々な困難に直結することはもちろん、一緒に生活をするご家族にも大きな負担となってしまうこともあります。もしかしたら感覚統合が上手くいってなかったのかも、と言う方は、お気軽に専門家へ相談をしてみてください。
株式会社ダンデライオンでは、子どもたちの可能性を広げる架け橋となることを目指した療育施設「BRIDGE(ブリッジ)」を千葉県内で9施設展開しています。
「子どもたちへの可能性を導く架け橋となる」を理念に掲げ、子どもたち一人ひとりの可能性を引き出すために、家族や社会とのつながりを大切にしています。
言語聴覚士、臨床心理士、公認心理師、作業療法士、理学療法士、保育士など多様な資格を持つ指導員が全国の特別支援学校や療育施設で実践されている療育技法「太田ステージ」に基づいた指導を行っています。
教室までお越し頂ければ、子どもたち一人ひとりに合わせたプログラムや療育の様子をご覧いただけます。BRIDGEへ、ぜひ1度ご見学にいらしてください!