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〜わかりやすくカンタンな「療育」の話〜

感覚統合とは?


この記事では『感覚統合』についてお話しします。勉強がうまくいかない、落ち着きがない、まわりに上手く馴染めない、不安が強くてお母さんのそばを離れられない、といったお子さんは、もしかしたら感覚統合がうまくいっていないことが原因かもしれません。

今回は、BRIDGEの研修も担当してくださっている発達相談支援教室 Passo a pass代表の石原 陽子先生にお話を伺いました。

●感覚統合とはどういったものですか?

人は視覚・聴覚・触覚といったカラダの外から入ってくる感覚はもちろん、眠い・暑い・お腹が減った・関節がどれくらい曲がっているか・カラダが傾いている、など自分のカラダの中から発生する様々な感覚を常に受け取っています。その複数の感覚は脳に伝えられ、分類・整理されていくのですが、それを感覚統合と言います。人は感覚統合によって、その感覚に応じた適切な行動を取ることができるんです。

ですが、脳の発達遅れなどにより、伝えられた感覚情報を上手く統合できないと、様々な影響が出てきます。例えば、発話・言語の遅れ、勉強がうまく進まない、運動面の発達遅れる、力の調節がうまくできない、先の細かい作業が苦手、周囲の環境に適応しづらい、まわりの人とうまく関われない、不安感が強い、などです。

他にも、過敏と言われる反応もあります。家電量販店などに入店すると明るすぎて一瞬目が開けていられなくなったりしますが、通常はすぐに慣れますよね。ですが、そういった調整機能が上手く働かず、光や音、触れられることなどに過剰に反応してしまうのです。

感覚統合の理論が提唱された1960年代には、1クラスに5人程度が感覚統合の問題で困っていると言われていましたが、今はもっと大勢いるとも言われています。

●具体的には、どういったアプローチをしますか。

まずは、どこの感覚に困難さがあるかを知るところから、はじめます。

幼児期のお子さんには『JMAP』、4〜11歳のお子さんには『SIPT』や『JPAN』といった専門的な検査を受けてもらうのが一般的。こうした検査によって発達指数といった発達の目安がわかります。それにより「子ども一人ひとりの発達状況の理解」と「発達段階に合った適切な支援のヒントを得る」ことができるようになります。

例えば、前提感覚(重力や体の傾き、スピード等を感じる感覚)に困難があり姿勢を上手に保てない発達障害を持った子には、楽しく遊びながら前提感覚が養えるプログラム(課題)を提供。感覚を処理し、統合していく力を養っていきます。大切なのは、個別にその子の運動機能の発達段階・発達障害に合わせていくことです。

プログラム(課題)を提供していく上では原則があります。

●子どもたちが自らやりたいと思ったことを治療に取り入れる。

無理にやりたくないことをやらせるようなことはしません。子どもたちが自らやりたいと思うような環境を作り出すことが重要です。

・ライトチャレンジ

提供する課題は、難しすぎず、簡単すぎないようにします。「できた」と子どもたちが思えるように、適切なレベルのプログラムを提供します。

・適応反応を導く

少し難しい話になりますが、感覚統合を司る脳の中枢神経系の発達を促すために、周囲の環境と適応的な反応を導く必要があります。適応的な反応とは例えば、お友達やセラピスト(感覚統合のプログラムを提供する側)とのやりとりが増える、発語が増える、「できた」という達成感が感じられているなどです。

セラピストは、そういった適応的な反応があるかどうかを見抜き、なければプログラム・治療の内容を再考していきます。

●感覚統合の問題だとは知らずに、世の中には困っている人がたくさんいそうですね

感覚統合の問題は、隠れた障害、なんて言い方をされることもあります。病院に行っても問題ないと言われることが多く、その子がサボっているだけ、怠けているだけ、思われることも少なくありません。ですから、感覚統合に困難がある子どもは、先生やまわりの大人から叱られてしまうことも多いんです。

そうすると「自分はダメなんだ」と自己肯定感が下がってしまい、鬱など二次的な障害に繋がることもあります。なるべく早く専門に治療ができるクリニックなどに繋がってほしいですね。

まだまだ感覚統合の認知度は高くはありませんが、今の困りごとを解決して、いい方向にいく支援があることをもっと知ってもらいたいと思います。また感覚統合の問題だと気づかずに生きづらさを感じている人も多いので、もっと幼児期から支援をできるように、セラピストさんを増やしていきたいですね。

●BRIDGEとの関わりを教えてください。

もっと若い人に感覚統合を知って、活かしてもらいたいんです。そのため、BRIDGEさんの新人研修の講師をやらせていただいています。他にもスーパーバイザーとして、子どもたちの症例を聞いてアドバイスもしています。またより深く知っていただくために、BRIDGEさんの職員に私のクリニックに来てもらい、一緒に子どもたちを見る研修も行っています。

●保護者さまへメッセージをお願いします。

検査を受けて、障害があるとわかることが恐い、という方もいらっしゃると思います。ですが、感覚統合の問題があるとわかれば、今困っていることもいい方向へ向かいます。そういった希望が持てるものであると知ってもらいたいです。

その子がその子らしく、障害を持っていても、自分はこれでいいんだ、自信を持っていいんだ、と思えるようになってほしいと思います。

石原先生ありがとうございました。まだまだ十分とは言えませんが、BRIDGEでは石原先生への日々の相談や研修を通じて、感覚統合を療育に活かすべく取り組んでいます。

当ブログでは、今後も療育のお話をドンドン発信していきます!皆さまにとって少しでも有益になる情報をお届けできればと思いますので、次回もぜひご覧ください!

 

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